今回インタビューに答えてくださったのは日本画家の十一(トヲハジム)さん。
9/20発売・Palm maison vol.016の068~075ページにて、
物語調のページをディレクションしていただきました。
”Good-bye,Lucy” from Palm maison 016
お邪魔したアトリエにて、
とても印象的な1枚。
凛とした瞳が印象的な彼女は
インドでヨガ教室で教えていたとき
知り合ったリトアニア人の女性が送ってくれた子供のころの写真を描いたもの。
十一さんのお気に入りだそう。
部屋の中のいろんな作品に登場する彼女。
描くときは彼女のようなストーリーがそれぞれにあるのではなく、
ビジュアルで単純に書きたいと思うものを作ることが多いそう。
ビジュアルを作ってキャラクターを作っていくこともよくされるのだとか。
モチーフはそのときそのとき描きたいものを描き、
基本的には「日本画」という技法に落とし込んでいきます。
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小鹿のバンビの絵。こちらを描いているところを実際に見せていただきました○
知り合いの子供たちがみているアンパンマンなど
子供のころ慣れ親しんだようなお話が
自分の書いたものになれば…という思いから
児童文学や本を書いてきだした十一さん。
そんな理由から今回のPalm maisonはストーリー仕立てで
ページを構成してくださいました。
Palm maisonのページを考える際のラフ。
基本的には絵しかかかないという十一さん。
ファッション誌であるPalm maisonのページはモデルが入ることもあり、
ストーリーを盛り込むことにしたそう。
女の子が出てくるストーリーを考え
モデルをはめ込む絵を考えて、ラフを作っていきます。
こちらのページはたくさんの大きな穴が気になるところ。
穴があると人は興味本位で覗きたくなります。
自分はその人の背中を押したい。
怖くなる、怖くなるけど落ちないことに安心感を感じる。
また、暗い穴の中を歩いていて、光が見えたらうれしい、安心感がある
人生とはそういうものだとおっしゃっていました。
そんなことを考えられながら作られていたのですね。
紙面ではすべて同じ大きさですが
描きたいものなど、絵の大きさは大小さまざま。
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ページを作るとき、
グラフィックや、カメラマンさん、スタイリストさんなど
モノづくりに関わる人に
作りたいイメージは伝えるけれど
そのあとはそれぞれの感性にまかせて、
出来上がるものを待つのだそう。
投げっぱなしにすると、自分の想像とは違う出来上がりができてくる。
それを見るのも楽しいと十一さん。
ものを作る者同士、それぞれを尊重しあい、
出来上がってくるものは受け入れるのだそうです。
Palm maisonのページは
いろんな人の化学反応で想像していたよりも
ずっと良いページになったとおっしゃっていました。
とてもかわいいページになっています♪♪
もしも、自分の納得のいかないようなものが
上がってきた場合はどうするのか疑問に思いましたが
そういう場合も、自分以外の人には
そういうニーズがあるのだと勉強になるそう。
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部屋の中には作ったものがたくさん飾られています。
映像に登場したものも。
壁に貼っている布は昔作品に使用していたものと同じ素材。
床は岩絵の具の跡がたくさんついています。
絵を描き続けてきた跡、時を重ねてできた
テクスチャがかっこいいです。
引っ越したらこちらを作品に使いたいそう。
たくさんの作品を見せていただきました。
制作を重ねてきた床にとても合います。
かわいい女の子。
作品のなかで、目がとても印象的ですが意識して目をきれいに、ということではないのだとか。
ですが目を描く際には命を入れている、絵に生命を宿す感覚になるのだそう。
使っていらっしゃる画材の墨とハイライトのコントラストも綺麗に映る理由の一つかもしれません。
また、黄金の涙を流す絵も印象に残りますが、なぜ黄金なのでしょうか。
涙を流すということは、”悲しい”ということではなく、感情があふれたときに流すものだというイメージなのだそうです。
なぜ日本画を絵の技法として選んだのでしょうか。
高校を卒業し、美大などにはいかなかったそう。
世界で仕事をしたいと思っていた十一さんは
日本らしいものがいいのでは、という思いから日本画を選びました。
また、アクリルや油絵具よりも、日本画の岩絵の具や膠の画材は削ったり割ったり
テクスチャをだしやすく、求めた質感が出せたのも理由がひとつ。
最初は書家になりたく、勉強をしていたそうですが
書には限界がある、世界で戦えないと感じた十一さんは日本画家を目指すことに。
モノクロのような画面は炭と胡粉しか使っていないので水墨画や書と似た雰囲気にも。
日本画だけど水墨画のようで、
モチーフが現代風なところもおもしろさの一つでは、とお話しくださいました。
これから描きたい絵について…
見ている人が首根っこをつかまれるような絵を描きたい、と語ってくださった十一さん。
きもちわるい、でもきれい、でも、なんでもなにかをと思わせ無ければ意味がない
怖いとか、きれいとか、きもちわるいとか
どんな感情でも、見た人の気持ちを揺さぶる何かを作らないと意味がないのだそう。
最後に、なぜ十一という名前になさったのか伺いました。
独学で勉強を始めて、様々なコンペに入りだした20代。
入賞時に名前が必要になっていきましたが、そのときは名前がなくていいと思っていたそう。
短歌の詠み人知らずのような、作品自体が良ければ書いた人の名前はいらないのでは、
という思いから、コンペなどでも”名無し”という名前で出品していましたが、
入賞がきまったコンペの主催者からの
「この名前ではみている人が馬鹿にされているように感じるので、他の名前を考えてほしい」
というような話がたくさんきたことがきっかけ。
そんな流れで雅号を考えたとき、”名無し”を数字で考えると七四と書ける。
それらを足して十一。
十というのはこの世界の最大を、一は最小の値を表す、ということを辞書でみつけたそう。
そんなすべてのことという意味合いをもった名前にしようと苗字・名前に分けて十一(トヲハジム)という雅号に。
また
十一を縦書きにすると地面に立つクロスになり、
ご両親が敬虔なクリスチャンだったそうで、そのような意味合いも含めてもよいのでは、という思いもあったそうです。
これからも活躍が楽しみな十一さん。
お時間をいただきありがとうございました!
ゲルハルトリヒター
ジュリアンシュナーベル
サイトンボリ
十一(トヲハジム/ TOO
HAJIMU)
日本画家
ノンジャンルな日本画の手法を駆使する孤高の画家。国内外での個展、グループ展、その他イベント等、活動の幅は広い。
ブルガリアで開催された「International DIGITAL ART Festival
DA」や、ベルギー・ブリュッセルで開催された「InterART city」及び「Beyond Art
Nipponia」に参加し、また上海、台湾でのアートフェスティバルに多々参加する。
銀座アップルストアーでの「Art meets Mac」イベント参加やアパレル企業、ブランドとのコラボレーションも多い。
http://toohajimu.com